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将来債権ファクタリングの勃興

ファクタリングで譲渡対象となる「債権」は、《現に発生していることを要しない》と民法で規定されています(民法466条の6第1項)。つまり、譲渡するタイミングでは発生してない債権、いわゆる「将来債権」を譲渡することも可能です。ただし、将来債権は、その発生原因となる契約や発生期間の始期・終期などで特定されていなければなりません。また、譲渡対象が過大な場合、取引の安全性や公序良俗を害するという理由から無効となる可能性もあります。

上記のとおり、民法の規定では特定可能な将来債権はファクタリングの対象となり得ます。しかし、発生前であることから債権の額面が確定しておらず、譲渡代金の算定が困難な場合もあります。例として、根拠なく恣意的に譲渡代金が設定され、譲渡金額に相当する債権が発生しない場合に、利用者に対して一律で買戻し義務を課すといったケースは、偽装ファクタリングの疑いもあるため注意が必要です。

手形制度が廃止され、ファクタリングが受け皿の一つに

国内のサプライチェーンでは、親事業者(振出人)が下請事業者(取引先)に対して「約束手形」を交付し、90日ないし120日の満期日まで支払を猶予してもらう手形払いが商慣習となっていましたが、一般社団法人全国銀行協会は、2026年度末をもって約束手形を廃止する方針を打ち出しています。また、支払サイトについても、最大60日までと短縮するよう行政指導がなされています。

約束手形が廃止された場合、サプライヤーである親事業者は一括ファクタリングなどの代替手段を検討するか、現金払いに切り替えることになります。「一括ファクタリング」とは、下請事業者・親事業者・ファクタリング事業者(金融機関含む)の三者による一括決済スキームのことで、電子記録債権が譲渡対象となる場合も増えています。一括ファクタリングは約束手形と同等の機能を有しますが、約束手形と比べて取扱いの事務に要するコストやリスクは低減します。

親事業者が現金払いに切り替えた場合、下請事業者(中小企業)の資金調達手段としてファクタリングのニーズが高まることが予想されます。これは、多くのファクタリング事業者が買取の対象としている売掛金は現金払いの売掛金であり、手形が振り出されている売掛金は対象外となるためです。

ニーズの高まりから、ファクタリング事業へと乗り出す企業の増加なども想定されますが、利用者には、前述した偽装ファクタリングへの注意はもちろん、節度ある利用を心がけることなどが求められます。