Site Loader

直近の裁判事例から「偽装ファクタリング」を読み解く

「ファクタリング取引」を提供する事業者と一言で言っても、その中には、健全なファクタリングサービスを提供する事業者と、「偽装ファクタリング」など違法な取引を提供する事業者とが玉石混交の状況にあるのが実情です。そのため、直近の裁判所の判断事例を読み解くことにより、利息制限法や貸金業法を回避する目的で行われる「偽装ファクタリング」がどのような取引なのかを知ることが重要となります。

売主に売掛債権未回収リスクの負担はなし

実際の裁判例では、ファクタリング取引によりファクタリング事業者に譲渡された売掛債権が回収できなくなった場合において、売掛債権の未回収リスクを売主(=利用者)が負担するか否か等を考慮して「有効な債権譲渡契約」か、あるいは「実質的な貸付契約(=偽装ファクタリング)」か、の判断が分かれております。
回収不能となった売掛金相当額について、売主(=利用者)がファクタリング事業者に「支払義務がない」場合は有効な契約(東京地判例令2.9.18)とされ、「支払義務がある」場合は「実質的な貸付契約(=金銭消費貸借契約)」と判断されています(東京地判例令2.7.16)。また、公序良俗の観点からは手数料水準の妥当性等も「偽装ファクタリング」該当性の判断のポイントになると考えられます。

「表明保証」における保証の範囲

なお、売掛債権の売買取引の際に行われる「表明保証」(契約締結時において、売掛債権が健全な債権であり、瑕疵がないことについて利用者が保証すること)については、その条項の存在自体は一般的な取引慣行でも認められており、当該「表明保証」は売主(=利用者)が売掛債権の未回収のリスクを負担するものでない、と判断されています(東京地判例令5.10.10)。逆に、将来にわたる売掛金の不払い等の回収リスクの不存在について、ファクタリング事業者が売主(=利用者)に表明保証を求めるケースは「偽装ファクタリング」に該当する、と裁判所も判断しており、ファクタリング取引の一般的な実務においても同様の考え方が採られております。

取適法改正による影響

一括ファクタリングの基本的な流れは、親事業者が電子記録債権を発生させ、下請事業者がそれを金融機関に譲渡して代金を得る形式です。しかし、取適法の施行に伴い、従来型の一括ファクタリングを継続することが困難になる可能性が高まっています。今後は、親事業者が一括で導入する形態から、下請事業者が自らの資金ニーズに応じて、必要な分だけを資金化する「2社間ファクタリング」の利用へとシフトしていくことも想定されます。

自主規制を通じた業界全体での健全化に向けた取り組み

OFA(オンライン型ファクタリング協会)では、自主ガイドラインを制定し、ファクタリング取引の業界全体での健全化に向けた取り組みを推進しています。

(抜粋)OFAガイドライン第1条
この規則は、ファクタリング取引業を営むものの業務の適正な運営の確保及び利用者等の利益の保護を図ることをもって、ファクタリング取引の公正かつ適切な利用促進を図ることを目的とする。

このように、ファクタリングサービスを提供する事業者が、自主ガイドラインに従った適正な運営を推進する自浄努力を重ねることで、「偽装ファクタリング」など不当な取引の削減に繋げていくことが期待されます。

ファクタリングを有効の資金調達手段として利用するために

ファクタリングは有効な資金調達手段でありますが、メリットとデメリットの両面を理解したうえで節度を持った利用を心がけていただくことが非常に重要です。加えて、利用者としても違法取引の類型を理解したうえで、健全なサービス利用を心がけることなどが求められます。