定義の違い
ファクタリングと貸金は非常によく似たものに思えるかもしれません。
しかし、法的に捉えると取引には大きな差異があります。貸金は「借入人の信用」「担保」を引当てにするのに対し、ファクタリングは「売掛債権」を売買契約によって買い取るものです。
そのため、それぞれを規制する法律にも違いがあります。
貸金を規制する法律
貸金には、貸金業法、出資法、利息制限法の3つの法律による規制が存在します。
刑事・民事の違いはあれど、どの法律においても利用者保護を目的とし、利息に関する上限規制が存在します。
それ以外にも貸金業法では、取立て行為における禁止行為や、過剰な貸付などを規制しています。
ファクタリングを規制する法律
ファクタリングを規制する法律は現時点では存在しません。
そもそも貸付は、借入人の信用を引当てにするため、借入人が自身の信用以上の借入れを行ったり、信用が毀損した場合に債権者によって厳しい取立てが行われる等のリスクが生じるなど、借入人の保護及び貸金業者による適正な業務運営を図るために規制の必要性が高くなっています。
一方で、ファクタリングは、信用ではなく「すでに利用者が持っている資産」を現金化する手段であるため、貸付における上記の規制趣旨を踏まえても、規制の必要性が高くないことが背景にあります。
しかし、闇金業者などによってファクタリングに偽装した高利貸し、不当な債権回収行為などが発生すると、業界の健全な発展が阻害される可能性があります。
そのため、ファクタリング事業者自身でファクタリング取引を健全化させていく目的で、
オンライン型ファクタリング協会(OFA)が設立され、同協会は、ファクタリング事業者の健全な業務運営を確保する目的で、自主規制ガイドラインを制定しています。
上記のとおり、ファクタリングはまだ発展途上な状況であり、玉石混交な側面があります。
しかし、中小企業の資金繰り対応の一つの手段として中小企業庁にも認識されており、レポート(注)などでもファクタリング取引の有用性が言及されています。
注)中小企業庁、「約束手形をはじめとする支払条件の改善に向けた検討会 報告書」、2021年3月15日
既存金融に代わる金融機能(オルタナティブファイナンス)として、その活用が期待されています。
ファクタリングに関する苦情・トラブルの事例
自主規制制定の背景となった、いくつかのトラブルの事例についてご紹介します。
【十分な説明を行わない事例】
・ファクタリングの仕組みや手数料の説明がないまま利用した。ファクタリング業者から入金された金額と売掛金の額との差額が手数料だと後で分かり、想定していた以上の手数料で、資金繰りが狂ってしまった。
【偽装ファクタリングが疑われる事例】
・ファクタリング業者が、売主から売掛債権を買い取る際に、債権の回収を委託する契約を締結した。しかし、売主が債権を全て回収するまで、買取代金の一部しか支払わない条件が付けられていた。さらに、最終的に債権の全額を回収できなくなった場合には、買取代金から減額する条件も付けられていた。
【勧誘に関する事例】
・ファクタリング業者から、断っても繰り返し営業電話がかかってくる。
【回収<取立て>に関する事例】
・ファクタリング業者が、週末に利用者と連絡が取れなかったことを理由に、支払期日はまだ先であるにも関わらず、売掛先等に一斉に連絡すると脅迫してきた。