将来債権の定義と仕組み
将来債権とは、その名の通り「将来発生が予定されている売上債権」を指します 。通常のファクタリングでは、既に発生している債権を対象としますが、将来債権ファクタリングは、契約時点ではまだ発生していない債権を買い取り、資金化する点が特徴です 。継続的な取引契約があり、過去のトラックレコード(実績)から「向こう数ヶ月でこれくらいの売上が発生する」と予測可能な事業者において、将来の事業分を切り出して早期に資金化する仕組みとなっています。
なぜ将来債権に注目が集まるのか
将来債権が注目される背景にはまず、スタートアップやEC事業者などを中心に、売上金の入金(発生)を待たずに資金を調達したいという即時的なニーズの高まりが挙げられます。これに対してファクタリングを供給する側も、オンライン取引の普及とデジタル化により、将来の取引発生予測を可能にするなど進化を遂げており、その絶対数もフィンテック企業やノンバンクの台頭によって増えています。
法的位置づけ
将来債権は、令和2年の民法改正によって明文化され、法的インフラが整いました 。民法第466条の6第1項では「債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない」と定められ、売買契約時に債権が発生している必要がないことが明確化されています。ただし、譲渡にあたっては対象となる債権の「特定」が不可欠です。また、「向こう100年分の全譲渡」といった過大な契約は、売主の事業を不当に拘束し、公序良俗違反として無効になる可能性がある点には留意が必要です。
主なスキーム図
将来債権ファクタリングの基本的な流れは「2者間ファクタリング」と同様ですが、資金提供のタイミングに違いがあります。通常のファクタリングは債権発生後に売買を行いますが、本スキームでは「将来債権の譲渡契約」を結んで譲渡代金を支払った後に、実際の債権が発生します。 その後、利用者はファクタリング会社からの回収委託に基づき、発生した債権の回収金を受領し、それをファクタリング会社へ引き渡すことで取引が完結します。
将来債権は、額面が確定していないため価値算定が困難という側面があります。注意すべきは、債権の内容が特定されていないケースや、発生しなかった場合に一律の買い戻しを求めるような取引です。これらは将来債権としての実体がなく、単なる金銭の貸借とみなされる「偽装ファクタリング」に該当する恐れがあります 。
ユースケース
将来債権ファクタリングの代表的なユースケースとして「RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)」が挙げられます。これは、各ユーザーの「レベニュー(売上)」に基づいて譲渡代金や対象債権を決定する手法です。 例えば、特定の期間内に発生する売上の一部(最大50%など)をあらかじめ買い取る契約を結びます。売上が変動しても、その実績に応じた割合で資金を切り出せるため、事業の成長スピードや売上規模に合わせた柔軟な資金調達が可能になる点が、利用者・事業者の双方にとってのメリットとなります。
国内事例(変動制)
変動制の事例として、3ヶ月間で合計100万円を調達するケースを考えます。この契約では、各月の売上の50%を上限に譲渡対象とします 。 例えば、10月の売上が50万円なら25万円、11月が70万円なら35万円、12月が100万円なら45万円というように、毎月の売上実績に応じて回収額が変動します。このようにレベニューの変動に合わせて回収額を調整することで、各月の収益実態に即した無理のない資金化が実現されています。
リスクと注意点
将来の稼ぎを前倒しで現金化するため、将来手元に残るはずの資金がなくなるという資金繰りへの影響を考慮しなければなりません。また、手数料が著しく高くないか、売掛先の回収不能時に買い戻す責任を負わされていないかといった契約条件の確認も重要です。売り上げの規模と比べて過大な調達額が課題だと資金繰りが逼迫するのはもちろん、「偽装ファクタリング(実質的な貸金)」とみなされるリスクもあることに留意してください。
まとめ
将来債権ファクタリングは、資金調達の新たな選択肢です。法制度の整備によって実務での活用が進んでおり、事例やユースケースも増えていますが、利用にあたっては自身の資金繰り計画を十分に理解して必要な限度で活用することが肝要です。
